2016年4月13日水曜日

第9回 OsiriXを用いた医用画像の表示-2D表示をもっと詳細に-

前回まではOsiriXをソースコードからビルドしたり、プラグインの開発方法をご紹介したりと、少し画像処理のエンジニア向けの内容を書いてきました。

今回はOsiriXを主に画像の参照のために使うユーザーの視点から、画像表示機能に着目して、便利なツールを含めてご紹介いたします。

2D表示機能


OsiriXは多彩な2D表示機能を有しています。
市販の医用画像処理ワークステーションと比べても、その機能には大きな差異を感じません。

ウィンドウタイリングの変更


初期設定のまま任意のスタディの画像を開くと、シリーズウィンドウというウィンドウが開きます。このシリーズウィンドウは、シリーズ画像を一つのフレームで囲んだものです。

(画像を表示しているウィンドウがシリーズウィンドウです)


このシリーズウィンドウは分割できます。分割すると、スタディに含まれる複数のシリーズをそのウィンドウの数だけ表示できます。

(T2w, T1w, T2*,FLAIRを4ウィンドウで表示)

ウィンドウ間のスライス同期もできます。同期の機能は複数用意されていますので、用途に合わせて使い分けることができます。

ここでは、メニュー>2Dビューワ>Propagate Settings Between SeriesとSync Series(same study)>Slice positionをチェックした状態で表示をしてみます。スライス位置と拡大率が同期されます。同一患者データでスタディが異なる場合でも、Sync Series(different study)をチェックして同期できます。


(メニュー>2Dビューワ>Propagate Settings Between SeriesとSync Series(same study)>Slice positionをチェック)

(拡大縮小も同期します)

同期をしたくない時はこれらのチェックを外してください。
画像の並び順を逆にしたい時は、ソート機能を使います。

(スライス位置で並び順を変更します)

(アセンディング:1画像目からスライス番号が上がっていきます)

(ディセンディング:最後の画像から1画像目までスライス番号が下がっていきます)

説明が前後しますが、シリーズウィンドウの中で、上記のように1枚ずつ画像を分割表示することもできます。これは、シリーズウィンドウではなく、メニュー>2Dビューワ>イメージタイリングを使います。任意の画像分割数を選んで表示します。

画像の拡大・縮小


一般的な機能ですが、よく使う機能ですので、ご紹介いたします。
OsiriXは2つの拡大機能が使えます。拡大鏡と虫眼鏡マークの拡大・縮小ツールです。
オススメは拡大鏡です。

(画像上でShiftを押すだけです)

もし、虫眼鏡マークを使って、マウス操作で画像を拡大・縮小した場合に画像の位置を移動させたい時は、上下左右の矢印マークのパンツールを利用します。

画像コントラストの調整


メニュー>2Dビューワ>WW/WLから、ウィンドウ幅とウィンドウレベルを調整できます。
事前にプリセット(事前に設定保存しておく)をしておくと、WW/WLのドロップダウンリストに設定がリストされるので、マニュアルで毎回合わせなくとも、簡単にコントラストを合わせることができます。

(Add Current WL/WWまたはSet WL/WW manuallyで増やすことができます)

削除するときは、このメニュー上でShiftを押しながらリストを選択します。

(Deleteで消えます)

ツールバーの変更


ツールバーを活用しましょう。ツールバーは、選択する表示機能によって変わります。

例えば、2Dビューワを開くと、2Dビューワ用のツールバーが表示されていることがわかります。3Dビューワを開くと、またその設定が変わっていることに気がつきます。このように、ツールバーは表示機能によって変更できます。

ツールバーのカスタマイズは簡単です。そして、変更は保持されます。

(または、ツールバー部分で右クリックします)

(ツールバーカスタマイズウィンドウが開きます)

あとは、好きな機能を選んで、ドラッグ&ドロップでツールバーに加えたり、外したりします。

もし、ツールバーの設定を元に戻したいと思ったら、カスタマイズウィンドウ下段のデフォルトツールバーセットをドラッグ&ドロップするだけで元に戻ります。

昔は、ユーザーセッティングを保存していましたが、今はそのような操作を省略できるように改良されています。

画像処理フィルター


いくつかの画像処理フィルターが利用できます。自分の好きなフィルターを追加することもできます。
画像処理フィルターについては、また別の機会に詳述したいと思います。ここでは詳細は割愛いたします。


(Convolution filter>sharp3×3の例)

リセット


リセット機能は便利です。
画像の表示状態を初期状態に戻します。例えば、画像コントラストを元に戻したい時や、拡大・縮小を元に戻したい時などに便利です。ツールバーに加えておきましょう。(画像処理フィルターやピクセルサイズの変更などは元に戻りません。)

(リセットボタン)

キーイメージ


キーイメージを設定できます。
キーイメージとは、何かの所見がある画像を意味します。しばしば、所見に関する重要な情報を含んでいる画像です。

キーイメージは、2Dビューア上で、command+Kのショートカットや、メニュー2Dビューワ>Key Imageなどで指定することができます。

キーイメージは、読影レポートなどを作成する際や、ティーチングファイルを作成する際などに便利な機能です。

このキーイメージをビューワ上で指定した後、データベースウィンドウから再度画像を開く際に、ROI&KEYボタンで開くと、ROIとキーイメージだけを参照することができます。

(ROIs&keys)

サブトラクション


サブトラクションはDSA画像(デジタルサブトラクションアンギオグラフィなど)のみで使える機能です。
DSA画像は血管以外の背景画像を差分した画像になっています。その差分されている背景画像のピクセルシフトの調整や、鮮鋭度を調整することができます。

(2Dビューワのツールバーにサブトラクションを追加)

(サブトラクションの詳細機能)

(サブトラクション前)

(サブトラクション後)

設定したマスクイメージをフレーム内の全画像から差し引きます。鮮鋭度も調整できます。

アノテーション


2Dビューワ>アノテーションから設定できます。
ビューワに表示する属性情報を選択する機能です。
患者の個人情報などを表示したくない時に利用したりします。

ワークスペース状態保存


2Dビューワの表示状態を保存する機能です。2Dビューワ>Workspace Stateで設定できます。
3Dのボリュームレンダリングの編集状態を保存する機能ではありません。(この機能は別にあります)

WW/WL、ズーム、パン、ローテーション、オリエンテーション、イメージインデックスの状態を当該スタディのデータベースに保存します。再度開く時は、自動的にこの保存状態が検索され、表示状態を再現します。再現したくない時は、ワークスペースの状態をリセットします。

DICOMメタデータ


DICOMのヘッダー情報を編集する機能です。
Editボタンで編集した後、Applyボタンで反映させます。
OsiriXの環境設定の一般の項目で、DICOM Edittingを許可するチェックをしておいてください。

(DICOMヘッダー編集)

その他


今回はご紹介しておりませんが、ピクセルのスケールを変更したり、画像を回転させたり、PET-CTフュージョン表示のための関心領域の微妙な面内位置調整をしたりする機能もあります。必要時は、使ってみてください。OsiriXメニュー内の2Dビューワ機能一覧から起動できます。

今回は2D表示機能だけに注目して、機能を解説しました。
OsiriXは、一般的な外来診察での画像参照や、画像診断あるいは画像の検像などにも対応できる豊富な画像表示機能が備わっています。

OsiriXはオープンソースですので、無料で試してみることができます。
ご活用ください。

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