2016年4月28日木曜日

第12回 OsiriXでPET画像表示-フュージョン・SUV(bw-max)算出設定を含めて-

いつもOsiriX HOW TO!をお読みいただき、ありがとうございます。

前回は、OsiriXの活用例として、CTコロノグラフィーの画像確認方法をご紹介しました。今回も同様に、実践的な内容を書いていきます。今回のテーマは、PET(ポジトロンエミッショントモグラフィー)画像の表示です。

PETを知ろう!


PETの書籍

まずは、しっかりと原理から知りたいという方向けに、PETに関する専門書籍はたくさん出ています。
臨床での利用方法を重点的に示している書籍や、機器の原理を示しているものまで様々です。

例えば、

全く知らない方向け;
PETに関わる医療者・科学者向け;
※これらの書籍から、深く知りたい分野を探索してみてはいかがでしょうか。

PET画像を見てみよう!


PETは、執筆時点では、画像解像度が他の画像検査機器に比べて低いです。そのため、CTやMRIなどの解剖学的な位置を正確に把握できる画像と組み合わせて利用されることが多くなっています。その代表的な例が、PET/CTです。
一般的に、PET画像は、PET画像とCT画像の2シリーズから構成されています。

PET画像(256*256)

CT画像(512*512)

これらの画像を重ねて表示したものがフュージョンと言われています。

フュージョン

はい、これで、PET/CT画像が見れました。

ここからは、上記の例のように、単純に画像表示するだけで、これらの情報を信じていいのかどうか、少し考えていきたいと思います。

PET/CTのフュージョンについてもう少し


PET/CT装置は、PETスキャナとCTスキャナを一体にした装置です。
この装置を利用することで、同じ位置の画像を得ることができます。
これは、PET/CT検査の一連の流れが、CTスキャンをしてから、同じ体位のまま、PETスキャンをベット単位で順次スキャンしていくので、同じ体の位置のPET画像とCT画像が得られます。この利点を生かしたのが、重ね合わせ画像(フュージョン画像)です。

この他にも、CT画像をPET検出器の吸収補正に利用できるなどの利点もあります。

このように、PET/CT装置は、PETとCTを組み合わせることによる、より質的な観察ができるように考え抜かれています。最近では、CTの代わりにMRIを組み合わせたPET/MRI装置も普及しつつあります。

PET画像についてもう少し詳しく


ここで、PET画像には、表示されるピクセル値の種類やその単位があることをお伝えしておかなければなりません。

画像検査機器が保持している生データをRaw dataといいますが、この生データはDICOMデータに変換されます。このDICOMデータは、PETの場合、主に以下の2つの種類に分かれます。

・放射能濃度のPET画像

単位容積あたりの体内の放射性医薬品からの消滅放射線の光子を検出した数(ディテクターで同時計数したカウント値)をピクセル値として保持しています。その単位には、kBq/ml, MBq/ml, uCi/mlなどがあります。"ml"は"cc"とも書けます。

・SUVのPET画像

standard uptake value(SUV)は放射性薬剤の腫瘍や臓器への集積の強さを表すための指標です。このSUV値がピクセル値になっている画像が一般的なPET画像です。SUVの単位は、g/ccやg/mlという単位になります。
この他にも、SUL(SUVを除脂肪体重で補正した値)という指標もあります。
SUVやSULは、以下のような最大値や最小値などがあります。
  • SUV/L max:関心領域における1ピクセルあたりの最も大きな値
  • SUV/L mean:関心領域における全ピクセルの平均
  • SUV/L min:関心領域における1ピクセルあたりの最も小さな値
  • SUV/L peak:腫瘍などの高集積部位における指定サイズ(例えばPERCISTでは、1cm3のROI=1.2cm直径円形ROI)に設定されたROIで計測されたSUV/L mean
このうち、一般に普及しているのは体重から換算されたSUV(bw)のSUV maxです。

以上を踏まえた上で、OsiriXを使って、もう一度、PET/CT画像を参照していきましょう。

OsiriXでPET画像(SUV画像)を参照!


先ほどまでは、特に何も気にせずにPET画像を表示していました。しかし、実際には、表示してから確認しておかなければならないことがあります。

それは、PET画像の種類と、SUVの計算設定です(OsiriXは執筆時点でSUV(bw)の画像処理が可能)。

それでは、OsiriXでSUVの計算や表示設定がどのようになっているかを確認していきます。この例では、OsiriXサンプルデータのLungixを使っていきます。

まず、表示しているPET画像が、SUV画像かどうかを確認します。モダリティから出力される時点で、"SUV"というキーワードが、DICOMヘッダーに格納されているか、あるいは、実際に画像の任意の場所でピクセルの信号値を計測してみると、判別ができます。
確実な方法は、後者です。

仮に、カウント値がピクセル値として格納されている場合は、ピクセルの信号値が非常に高くなります(例えば10000〜30000(8bitで最大32767)など)。

Lungixの例では、以下のようになります。

Bq/ml画像

(病変部の信号値:最大値28251)

単位も見れば一目瞭然ですが、画像コントラストだけでは、意外に判別がつきづらいと思われます。

ここで、すでにSUV画像であればよいのですが、もしそうでない場合、OsiriXでは環境設定からPET表示の設定が可能です。

環境設定からPETを選択(中央)

SUV Computationが未チェックの状態を

SUV Computationにチェックして設定

このように設定した後、もう一度、2Dビューワを開き直します。
すると、ピクセルがSUVに換算されます。

SUV画像

(病変部の信号値:最大値10.1)

SUV(bw) maxやmeanなどの値であれば、18F-FDGを利用した場合、おおよそ最大15程度です。

PET環境設定画面をもう少し詳しく


PETの環境設定では、便利な機能が揃っています。

ウィンドウレベルの絞り設定


表示するピクセル値の範囲を指定します。

次の画像は、SUVを極端に8-10に絞った画像表示例です。

設定画面:SUVの下限を8、上限を10に設定

SUV画像表示結果:病変部


このように、SUV画像を参照するときに、SUVの最大・最小を決めて画像を表示すれば、集積の多い箇所だけを素早く見つけることができます。仮に、Bq/ml画像でも、全スライスのうちの最大ピクセル値を100%として表示する設定をすれば、同様の表示が可能です。

フュージョン表示方法の選択


PET画像のオパシティを決定するための表示方法を選択できます。

選択画面

Linear:線形伝達関数です。低いところは低いオパシティ(つまり透明)、高いところは高いオパシティで表示します。


High-Low-High:信号が高いところも低いところも、オパシティを高くします。


Low-High-Low:信号が高いところも低いところも、オパシティを低くします。


Log:logarithmic curve(対数曲線)でオパシティを決定します。


Inverse Log:Logを反転したオパシティを決定します。


Flat:リニアでフラットなオパシティを設定します。すべてのピクセルが、50%のオパシティとなります。


SUV算出に利用する撮像開始時刻選択


次に、細かい部分になりますが、非常に重要な設定を確認します。それは、PETの撮像開始時刻です。OsiriXをはじめ、いろいろなPET画像解析ソフトウェアは、SUVの算出のために撮像時刻を必要とします。この撮像時刻は、DICOMヘッダーデータに格納されています。ただし、施設やモダリティベンダーによって、真の撮像開始時刻が格納されるDICOMタグが異なる場合があるため、しっかりと確認しておく必要があります。

例えば、OsiriXでは、以下のDICOMタグを選択できます。

撮像時刻の選択画面

これが、バラついていると、SUVの値が変わってしまうために、非常に重要な設定になります。

参考までに、OsiriXのSUV(bw)算出式は以下の通りです。

Pix=PET image pixels
Pw=Patient weight(kg)



放射能量計測時刻補正投与放射能量 [C:Corrected activities] (MBq)

T=Tracer activities
tS=scan time
tM=measured time

ここまでの手順のような確認をしながら画像が参照できれば、ようやく表示されているSUV画像を信じることができます。

フュージョン画像の位置調節


最初にフュージョン画像を表示していましたが、このフュージョン表示も重ね合わせの位置を調節することができます。この機能によって、スキャン時に体動があったとしても、ある程度は補正することができます。
残念ながら、この例で使用しているLungixでは、スライス厚が異なることと、スライスギャップがあるために利用できませんが、本来であれば、以下のような操作ができます。

フュージョン画像を表示した状態で、2Dビューアまたは直行MPRのツールから、3D positionを選択します。オリエンテーションマークと似ていますが、異なる機能です。

直行MPRを表示

3Dポジションツールを選択 

位置関係を微調整


この機能はマニュアル操作ですが、ちゃんとした3Dデータ(スライス厚やスライスギャップのない)があれば、CTウィンドウにPETウィンドウをドラッグ&ドロップして出てくるポップアップから、registration/Point-Based Registrationを選択して、horn registration algorithmsを用いた剛体レジストレーションを行うことも可能です。

このときのウィンドウのドラッグにはコツがあり、ウィンドウ上部に表示されているDICOMデータマークをつまむようにする必要があります。

画像ウィンドウ上部のDICOM画像マークをしっかりつまんでドラッグ

PET画像をCT画像にドラッグ&ドロップ


今後は、非剛体レジストレーションなどの機能が実装されることが期待されています。

最後に


PETスキャンは、ダイナミック検査による動態解析から、受容体結合能の推定にも利用されています。非常に高度で、期待されている検査・診断技術です。

しかし、いくつかの課題もあるようです。例えば、サイクロトロンを保有していない施設への放射性医薬品のデリバリー、装置ごとの品質の違いを最小化するPETの標準化やファントム開発などです。このファントム開発に関連して、デジタルファントムの研究開発もQIBAの研究グループによって進められています。

話を戻しますが、

OsiriXはPMODのようなPET専用の解析ソフトではありませんが、上述のような、画像参照には便利な機能が揃っています。無料で試せることも魅力です。一度試してみてはいかがでしょうか。

Visionary Imaging Services, Inc.は、イメージング技術サポートを通じて、創薬研究や医療機器開発など、臨床研究(臨床試験)サポートサービスを展開しております。OsiriXシリーズも販売中です!よろしくお願い致します!

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