前回は、OsiriXを使ってPET画像表示をしてみました。今回も、実践的な一例をご紹介したいと思います。今回は、すごくメジャーな計測手法である、股関節の種々の計測(CE、Sharp)について触れていきます。
寛骨臼の計測(CEとSharp)
まず、股関節には臼蓋(きゅうがい、または寛骨臼:かんこつきゅう)という部位があります。股関節の大腿骨頭(足の付け根の丸い部分)と腸骨をつなぐ丸い受け部分です。
以下、臼蓋の図を示します。
(Acetabulum:臼蓋、または寛骨臼)
(大腿骨頭と寛骨を分けたときの図)
(X線写真で正面からみた股関節)
この臼蓋を対象とした各種計測が主に変形性股関節症の診断のために利用されています。
計測手法について、もう少し詳しくみていきましょう。
CE角計測:Central Edge Angle
CE角は、1939年にワイバーグ氏により開発された計測角1,2)です。
計測方法は非常にシンプルで、3本の線を引いて、そのうちの2本の線の間の角度を計測するだけです。
3本の線は、
- 両側の大腿骨頭中心を結ぶ線(A線とします)を引きます。
- 検側の大腿骨頭中心からA線に垂直な線を 頭側に引きます。
- そして、これとは別にもう一本、検測の大腿骨頭中心から、臼蓋外縁の接線を引きます。
手順2と3で引いた線の間の角度が、CE角です。
(CE角計測のための3本のライン:Wiberg,1939)
※図中、B-C-Eの角度がCE角
CE角は、成人で25°以上が正常と考えられていますが、性差や年齢(新生児、乳幼児、小児など)でその範囲が変わります。
また、新生児などの骨端が出現する前の症例では、骨端部近位中央(山室氏の発表しているO点)を骨頭中心の代わりとするOE角もあります。
Sharp角:通称Sharp angle(正式には、Acetabular angle)
Sharp角は、その名の通り、1961年にSharp氏が発表しました。正式には、Acetabular angleといい、直訳で臼蓋角です。α角とも呼ばれています。ただ、臼蓋角というと、同じ呼称で別の意味を持つ臼蓋角もあるので、一般的にSharp角(シャープ角)と呼ばれているようです。
シャープ角も、CE角と同様に、シンプルな角度です。2本の線の間の角度を測るだけです。
まず、左右のY状軟骨の腸骨側の下端(Hilgenreiner line)もしくは、左右のPelvic tear drop(U-figure)の下端を結ぶ線を引きます。小児ならば前者、大人ならば後者です。
次に、臼蓋の内縁と外縁を結ぶ線を引きます。
シャープ角は、これらの2線がなす角度です。
小児のシャープ角計測例:左右Y状軟骨ライン(Hilgenreiner line)が基準
(出典:Case courtesy of A.Prof Frank Gaillard)
(Pelvic tear drop(U-figure))
正常な範囲は、小児の場合(Hilgenreiner lineで計測)で28°よりも小さいこととされています。
これ以外にも、いろいろな基準線や計測角があるようです。
ここからは、上記の代表的な2つの角度を計測していきましょう。
OsiriXでCE角、Sharp角の計測!
サンプルデータとして、股関節が撮影範囲に入っていたMergeを使いました。本来は、ちゃんとX線が垂直入射される股関節の画像で計測するのがベターですが、今回は例なので、こちらを用いてみます。
OsiriXを使って、CE角計測を計測した結果はこちらです。
右股関節:CE angle = 20°でした。
手順は、以下の通りです。
両側の大腿骨頭中心を決めます。
このために、円形ROIを両側の骨頭に設定しました。中心には目視でポイントROIを置きました。(厳密に計測をする際は、この手順の自動化ツールが必要ですね。)
(骨頭の中心を設定)
大腿骨頭中心を結ぶ線を引きます。
ここでは、Perpendicular Lineツールを使います。このラインを、先ほど作成したポイント上に作成します。
(大腿骨頭中心を結ぶ線を引きます)
検側の大腿骨頭中心からA線に垂直な線を 頭側に引きます。
Perpendicular lineを使っているので、大腿骨頭中心を結ぶ線に対する垂線を容易に設定できます。
骨頭中心にPerpendicular line(B,C)を設定
最後はアングルツールで、臼蓋外縁・大腿骨頭中心・垂線の端をクリックして、角度を計測します。
(右股関節のCE角を計測)
簡単に計測できます。
Sharp角も計測できます。Sharp角は、ダイナミックアングルで一息に計測できます。
ダイナミックアングルツールで、右股関節の各基準点にポイントを設置
設置ポイント:左右tear2箇所、臼蓋の外縁
※成人例であるためSharp角はおよそ48°
また、これらの計測状態は保存されますので、見直すこともできますし、計測結果をXMLなどの電子データで出力することもできます。また、このブログのように、計測した結果画像を保存することも可能です。
X線画像以外ではどうだろうか?
ここからは、少し違う視点から、考えてみます。
・CT画像で計測できないだろうか?
被ばくの問題もありますので、実際に利用はされないと思いますが、例えば、3D画像上での計測もできます。Ray-sum画像で計測もできますね。
・MRI画像で計測できないだろうか?
筋肉や腱を見ながら基準点を探すことができるので、これは画期的かもしれません。
3D画像で試してみたいです。
ただ、計測は出来るとしても、MRI検査が動きに弱く、時間もかかるために、臨床での利用は難しそうです。
・超音波画像でできないだろうか?(3D超音波でできるかも?)
最近では、超音波装置で3D画像が得られるようになってきていますので、種々の関節の3次元画像再構成ができるようになれば、もしかしたら、使いやすくて被ばくなしということで、このような計測に一番使われるかもしれませんね。個人的に期待大です。
最後に
今回は臼蓋の角度計測について触れました。
臼蓋の角度計測は、シンプルで手技も簡単です。普及した理由の一つかもしれません。OsiriXはこのような計測も簡単にできます。そして、計測結果の保存や、電子データとしての出力も可能です。臨床だけでなく、研究用途にも使えます。一度試してみてください。OsiriXは無料の高機能医用画像処理ワークステーションです。
参考文献;
- Wiberg G. Studies on dysplastic acetabula and congenital subluxation of the hip joint. Acta Chir Scand Suppl. 1939;58:5–132.
- The CE Angle of Normal Hips:http://www.tandfonline.com/doi/pdf/10.3109/17453677608988709
- T.YAMAMURO:OE角:http://medicalfinder.jp/doi/10.11477/mf.1408908420
- ACETABULAR DYSPLASIA The Acetabular Angle:http://www.bjj.boneandjoint.org.uk/content/jbjsbr/43-B/2/268.full.pdf
- Scot E. Campbell, MD:Radiography of the Hip:Lines, Signs, and Patterns of Disease
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