2016年4月23日土曜日

第11回 OsiriXでCTコロノグラフィ画像確認!

前回はOsiriXの2次元画像表示方法を少し詳しくご紹介しました。
今回は、日本で普及しつつある「CTコロノグラフィー」の画像確認について、少しだけご紹介させていただきます。

CTコロノグラフィーは、今後の普及が期待されている検査で、大腸内視鏡検査のような事前準備をして実施するX線CT検査です。世界中で1994年ごろから研究が進められてきました。この検査は、大腸内の残存物を排泄してから、大腸を膨らませてCTスキャンします。この検査で、10〜20mm径の大腸がんを観察することができます。執筆時点で、5〜6mm以上のポリープ様の腫瘍を発見できると報告されている医療施設もあります。

小さな病変を見つけることができるということは、がんの早期発見に繋がります。
このような検査技術や診断技術が進歩していくと、これまでよりも病気の検出ができるようになるため、期待の高まる検査の一つです。

詳しくは、専門書を(例えば、こちら:http://www.amazon.com/CT-Colonography-Principles-Practice-Colonoscopy/dp/1416061681:Google bookを使って、多少ですが内容を読むこともできます。)


CTコロノグラフィーのための画像処理


CTコロノグラフィーは2種類の腹部CT画像(仰臥位・腹臥位)が得られます。この画像を画像解析ワークステーションを使って解析します。
CTコロノグラフィーの検査の後処理は次のようになります。

・3D画像処理にて、大腸のみを抽出して3D画像をつくります。
・仮想内視鏡や展開像で大腸の内側を観察するために腸管に対する中心線を設定します。
・展開像、MPRや仮想内視鏡を組み合わせて、病変を検出します。


OsiriXで試してみよう!


さっそく、これらの画像処理をOsiriXで体験してみましょう。
チェック診断をされる技師、存在診断や質的診断をされる読影医によって、読み方は様々ですが、今回は一例として、以下のようなルーチンを考えました。


  1. まず大局的に見る:模擬注腸X線画像の観察
  2. (腸管内展開像の表面を観察する+CAD)
  3. 疑わしい部位をMPRで観察(基本は横断像)
  4. 必要に応じて仮想内視鏡を確認
  5. (3D画像上での病変部位再構成や計測)

これらのルーチン観察を行う上で、必ず仰臥位と腹臥位を比較しながら見ていくこととします。

上記のうち、カッコで示したワークフロー(2,5)は、まだOsiriXでは実現できません。しかし、その他の操作は可能です。OsiriXを用いてCTコロノグラフィーの研究発表を行われている先生もいます。

では、実際に試していきましょう。


大腸3D画像を作る-まず大局的に見る


まず、注腸造影検査などの際に、大腸がんを疑う所見として、アップルコアサインというものがあります。これは、言葉の通り、大腸の病変部が、かじられたリンゴのように見えることからそう呼ばれています。大腸がんの診断をする上で初歩的で重要な所見です。

まず、この所見がないかを、大局的に見ていくために、大腸内腔だけをターゲットとした3Dボリュームレンダリング画像を作ってみます。

今回はこの操作をリージョングローイングで行っていきます。
操作方法は簡単で、リージョングローイングに必要な設定を行ったのちに、関心領域を選ぶと、自動的に二酸化炭素で膨張した大腸内腔のみが選択されます。


(対象画像を2Dビューワで開いて、Growing regionを選択)


(リージョングローイングの設定)


(任意の大腸内腔部位をクリックして自動計算される大腸内腔)

この大腸3D画像は任意の方向から大局的に観察することができますので、注腸造影では体位変換の制約があるために描出できない箇所を見ることができます。

このやり方でなくとも、MIPやボリュームレンダリングでWW/WLやオパシティカーブを変更して、観察することもできます。


MPRを用いた画像の観察


3D画像や横断像で怪しい部位を見つけた場合、より詳細な位置関係を多断面で観察します。
例えば、3D曲線を利用して中心線に直行する再構成画像を確認したいというニーズもあると思います。こういった場合、OsiriXでは、3DカーブMPR機能を使います。


(大腸の中心線を描き、その曲線に対する3つの直行断面を表示)

このモードによって、中心線に直行する断面の観察ができることがわかります。単純に腹部の横断面で観察するよりも、大腸内腔の輪切りを観察できるので、表在病変や茎を有するようなポリープ様病変を詳細に観察することができます。


仮想内視鏡モード、中心線設定とフライスルー


OsiriXには標準で仮想内視鏡機能が付いています。この仮想内視鏡で表示された大腸内腔を、スムーズに観察するための"フライスルー"という機能も付いています。
フライスルーをさせたい大腸内腔の経路もユーザーが作成できます。


(仮想内視鏡モードを起動し、ビューポイントを大腸内腔に設定)

横断像やMPRだけでは見落としてしまいがちな病変も、フライスルーを合わせて使うことで、ひだや内膜の形状変化やポリープなどの発見に役立ちます。(子宮内膜症など、外部から大腸壁を押している場合などもあるため、仮想内視鏡のみでの判断には注意が必要です。)


最後に


今回ご紹介した通り、ある程度の処理や解析は、OsiriXでもできますが、実はもっと高機能なワークステーションの開発は進んでいます。

市販のワークステーションには、例えば、仰臥位と腹臥位のより使いやすい比較表示、dissection view、標的病変のタグ付け、標的病変部位のみに絞った多断面再構成や3D画像表示上での病変の長径計測、MPRと仮想内視鏡の合成画像表示、形状に特徴のある領域を強調表示するCAD(computer aided diagnosis)機能など、CTコロノグラフィー専用の機能があります。

これらのCTCに特化した機能がOsiriXにも実装されるといいですね。

ただ、今回ご紹介した通り、ある程度の処理や解析は、OsiriXでもできます。
OsiriXはオープンソースで無料の医用画像解析アプリケーションです。研究用途で試してみてください。

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