2016年5月25日水曜日

第15回 OsiriXの構造化レポート!(その1)

今回は、画像から得られるエビデンスを記録する非常に重要なドキュメントである構造化レポートについて、OsiriXを用いた操作方法や操作上の工夫を中心にご紹介いたします。

ご参考;
OsiriXを用いたレポーティングでは、Macの機能を使って簡単に音声入力が可能なことをご存知でしょうか。もしご存知でなかった方は、一度お試しください。
Macでテキストを音声入力する

画像診断レポート


このレポートは、医師(一般的に放射線科の画像診断医)が作成する画像診断報告書です。
根拠に基づく医療という言葉をご存知の方は多いと思いますが、この画像診断報告書は、主治医と患者が最適な治療を行うために、確かな画像から得られるたくさんの情報を正しく理解して治療に役立てるための報告書です。画像診断医は、医師の中で画像の専門家として活躍されています。
その画像診断医を陰ながら支えている放射線技師、看護師、医療事務などもいます。

画像検査の結果、最終的に患者さんの手に届くのはこの画像診断報告書なのですが、最近ではその作成の過程で作られるレポートも研究が進んでいます。例えば、放射線技師が行うチェック診断や一次読影があります。

(一般的な画像検査は主に放射線技師の役割になるため、実際に検査をした放射線技師にしか気付けない画像上の変化や行った手技などを画像診断医や主治医と共有するために、このようなチェック診断や一次読影というものが必要とされつつあります。)

画像診断レポートは、医療の中で重要な役割を果たしているため、そのニーズも高く、レポートの質を高めるための研究も行われています。

例えば、自然言語処理(Natural Language Processing)を用いた入力文章の入力補助や、統制用語や疾患ごとの画像診断知識のモデル化などがあります。

このようなレポートの質を高めるための研究成果を実装する技術として近年注目され始めているのが構造化レポートです。

構造化レポート


構造化レポート(正式には、構造化画像診断報告書:Structured radiology report)は、一般的に、ベストプラクティスなレポーティングテンプレートを開発するためのフレームワークを提供するものとして認識されています。

誤解を恐れずに表現すれば、料理のレシピを連想してもらうといいと思います。
料理のレシピはその料理の最終成果物と作る手順・材料・分量がわかりやすくまとめられています。そして、筆者の考察やワンポイントアドバイスなどもあります。

料理のレシピと同様、画像診断のための構造化レポートも実施された画像検査に対する画像診断の目的と画像の特徴をわかりやすくまとめるためのテンプレートになっています。

なぜ、テンプレートになっているとメリットがあるのでしょうか?

筆者が思い当たるものとしては、知識支援(意思決定支援を目指したもの)とデータベース化などがあります。

このうち、知識支援のメリットについて補足しますと、

人間の脳には限界や差があります。

例えば、この瞬間に脳をフル活用して第六感を目覚めさせなさいとお願いされても難しいでしょうし、3秒間見せられた写真をデッサンでなるべく客観的に再現しなさいといわれても、そのデッサンの結果は人それぞれです。疲労や体調による集中力の波、記憶、書き手が学んできた学術体系の違いなどにもよると思います。完璧に再現できたと評価されるものとそうでない者が現れてしまうでしょう。

これらの結果のバラつきを小さく留め、全員が尤もらしい解を出すためには、尤もらしい解に近づきやすくなる知識が必要です。

十分に解明された特定の疾患を対象とした画像診断レポートがあらかじめ構造化(テンプレート化)されていたら、記載されるキー情報の的も絞られ、書き手のスキルに依存する属人化を小さく留めることができると思います。

それでは、実際にどのようにレポートが作られるか、その例としてOsiriXを使ってそのフローを体験してみたいと思います。

OsiriXの標準レポーティング機能


OsiriXは標準のレポーティングに以下の一般的なドキュメントエディタを利用しています。
  • Pages
  • Microsoft Office word
  • Libre Office
  • リッチテキスト(.rtf)
デフォルトではPagesの設定になっています。
変更するときは、OsiriXの設定画面から設定を切り替えます。

(画面下のReportで切り替え)

以下、Pagesの例を示していきます。

1.作成

レポートを作成するには、レポートを作成したい患者のスタディをデータテーブルで選択した状態で、「Report」メニューアイコンを選択します。
すると、あらかじめ設定されたPagesのテンプレートドキュメントが立ち上がります。


立ち上がったPagesで所見や診断を記載して、必要に応じてキー画像もPNG形式でコピー&ペーストできます。
キー画像のコピペは、2Dビューワに表示されている画像をcommand+Cでコピーし、Pages上でcommand+Vでペーストします。

(レポート編集画面)

Pagesの基本的な機能を利用できるので、デザインの変更も可能です。

レポートを編集後、Pagesを終了すれば、自動的にスタディレベルで.pagesデータが保存されます。
再度編集したい場合は、もう一度同じ患者のスタディを選択した状態で、レポート機能を起動すれば、前回保存したレポートを編集できます。

(Brainix(スタディレベル)にレポートが保存されていることがわかる)

もし、もう編集をしない(できないようにしたい)ということであれば、File>レポートからPagesファイルをPDFに変換して保存しておくこともできます。

レポートの保管場所


上記のように、OsiriXのデータベーステーブル上でレポートの保管状態を確認できますが、実際のデータはDICOMデータと同様、OsiriX Dataに保存されています。

(先ほどのレポートがOsiriX Data>REPORTSに保存されている)

このOsiriX Data内に、PAGES TEMPLATESというフォルダも含まれていることがわかります。このフォルダの中に、「OsiriX Basic Report.pages」があります。このドキュメントが、レポート機能を起動したときに初期設定で呼び出されるようになっています。

もし、レポートのテンプレートを自分流にアレンジしたい!という方は、このテンプレートを編集して、デフォルトで自分のテンプレートを起動できるようにしましょう。
具体的な詳細説明は次回詳述いたします!

以上が一般的なレポーティングの機能です。
次に、構造化レポートのケースを見ていきます。

OsiriXの構造化レポート


OsiriXはバージョン7から構造化テンプレートプラグイン機能が拡張されました。
2016/5時点でデフォルトで使える構造化レポートは次のものがあります。


例として、TAVIレポートを見ていきます。


まず、CTアンギオ画像を2Dビューワで開きます。
それから、プラグインメニューからTAVIを選択します。


あとは、表示されたレポートにステップバイステップで入力をしていくと、最終的にキー画像と計測値がまとまったレポートが完成します。

(必要な特徴をまとめたレポートが作成されたことがわかる)

TAVIレポートについてのより具体的な内容は、こちらをご参照ください。
http://www.osirix-viewer.com/osirix_plugins/TAVIReport/html/manual.html

Pagesで作成するレポートのように、一般的なレポーティングではほとんどの文章をフリーテキストで入力しなければならなかったのに対して、構造化レポートでは、必要な評価項目や記入内容が構造化された上で、フリーテキストで考察できるように設計されていることがわかります。

このように構造化されていることで、フリーテキストで報告される内容よりも、レポートの記載内容が統一されるため、情報の共有にはメリットがあると思われます。

また、この構造化レポートはPACSの中でDICOMとして取り扱うことができます。

(補足)DICOMと構造化レポート


構造化レポートはDICOMで取り扱われます。
DICOMって?と思った方はこちらをどうぞ。


ここでは詳しい話は割愛しますが、DICOM構造化レポート(DICOM-SR)のリファレンスはたくさんあります。
例えば、D.Clunie先生が公開されている資料も参考になります。

最後に


今回はOsiriXのレポーティング機能を中心として、構造化レポートについてご紹介させていただきました。

構造化レポートのメリットは、知識支援やデータベース化などが挙げられます。
電子カルテに記載される診察記録やアナムネのように、構造化レポートもPACSの中で意思決定支援を見据えて着々と進化しています。

構造化レポートは研究分野としてみるとまだ歴史の浅い試みではありますが、フリーテキストよりもデータの蓄積のメリットはあるため、適応が拡大されることを個人的には願っています。

そして、医師だけではなく、医師以外のメディカルスタッフにも理解されやすい情報伝達ツールになることを期待しています。

Visionary Imaging Services, Inc.は、イメージング技術サポートを通じて、創薬研究や医療機器開発など、臨床試験や臨床研究サポートサービスを展開しています。
医療機関や教育機関向けのOsiriXサポートも行っております。
よろしくお願いいたします!

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